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写メ日記

全75件中71~75件を表示

龍生の投稿

真紅と左腕と、解放のサイコガン

09/24 03:28 更新

子供の頃
授業で書いた作文は
他の子たちと違って感情を優先していた

先生はその部分を好評してくれた
でも採点され、先生の視点で文章が直されると
何が良い作文なのか、わからなくなった

評価のための整った文章は
自分じゃないようで
心が置き去りになり
感情のペンは、左手の奥に埋もれていった

――今日は会社で
プロジェクトのプレゼンを行う日だ

評価を得るために
適当に作った資料を読み上げるだけの
感情のないプレゼン

給料が上がり
昇進できればそれでいい
他人の評価ばかりを気にしながら
心を置き去りにする日々

――家に帰り眠りにつく
夜中、悪夢にうなされて目を覚まし
汗まみれの顔を水で洗った

鏡に映る自分を見ながら思う
これが本当の自分か、と

その疑問に呼応するように
左手が疼く
ポケットに手を入れると
そこには親指ほどの
真紅のダイヤモンドがあった

「世界で一番高価なレッドダイヤモンド……」
思わず呟く

よく見ると
その中心には小さな黒点が揺らめいていた

――実は僕は
宝やファンタジーが好きなオタクだった

黒点入りのダイヤを調べると
それは「アンチマターを封じ込めた
レッドダイヤモンド」だった

アンチマター――
数グラムで核爆発を超える
究極の物質

なぜ自分がこんなものを持っているのか
困惑したまま
朝を迎えていた

――出社すると
会社の玄関前に黒服の男たちが立ち並んでいた

「待て!こいつから反応がある!」
一人が叫ぶと
数十人の黒服に取り囲まれる

「身体検査をさせてもらおう」
ポケットのレッドダイヤモンドが見つかった

「これはどこから持ってきた!」
「わからない」

答えた瞬間
殴る蹴るの暴行が始まる

「言え!言わないと死ぬぞ!」
血に染まる視界の中
もうダメだと思った時――

――僕の中から感情が溢れだした
身体に衝撃が走る

次の瞬間、拳が黒服の顔面を打ち抜いていた

「貴様、何者だ!」
黒服が叫ぶ

小型マシンガンが一斉に僕へと向けられる
絶体絶命――

その時思い出した
僕は伝説のトレジャーハンター

数年前
アンチマターで世界を滅ぼそうとした巨悪から
それを奪い
レッドダイヤモンドに封じた

逃走の果てに顔を変え
記憶を失っていたのだ

――マシンガンが火を吹く刹那
左腕が光り
感情をエネルギー弾へと変える
サイコガンが目を覚ました

胸の奥から
怒りと悲しみと歓喜を燃料に
灼熱の光弾が迸る

轟音と共に
圧縮された想いが炸裂し
閃光が視界を真白に染めた

黒服たちは叫ぶ暇もなく
次々と吹き飛ばされていく
銃弾の嵐を
感情の奔流がかき消していく

焦げた匂いと破片が散る中で
僕は低く呟いた

「失った本当の感情を取り戻したぜ」

――忘れていた感情を取り戻した時
心の地図を
自由に描きたいと願った

その瞬間
固いレッドダイヤモンドの奥で
閉じ込められていた宇宙が解放され
赤い光は千の星座となり
僕の影を照らし出した

その輝きは
過去に置き去りにした涙を洗い流し
未来を選ぶ自由を与えてくれる

そして僕は気づく
奪われたと思っていた「感情」は
ずっとこの胸の奥で
眠っていただけなのだと

夜明けの空に
解き放たれた光を仰ぎながら
僕は初めて
自分の心の声に頷いた

6598

雨音と影と、崖の向こう

09/23 01:28 更新

子供の頃
雨の日に歩いたどぶ川のほとり
覗き込んだ瞬間、足を滑らせ
隣にいた影と共に川へと呑まれた

濁流に必死で藻掻きながら
偶然通りかかった大人に引き上げられ
助かった安堵と、まとわりつくどぶ川の臭い

家に戻り体を洗い流しながら
あの時、後ろから蹴られたことは
言わないでおこうと決めた

蹴落としたその人は
今は風の噂で大変な状況になっているようだ

――大人になってからも、
同じ光景は繰り返された
深夜も早朝も身を削り
積み上げた大きな仕事を
上司の一言で奪われる

「後はA君が引き継ぐ」

背中に走るあの感覚
蹴落とされる痛みと重なっていた

その日、僕とAは
重大な機密を託されていた
国家を揺るがすほどの情報を収めた
マイクロチップを顧客に届ける任務についた

僕とAは護身用の拳銃を携え、
僕は靴下にグラップリングガンを忍ばせていた
(壁や天井にフックを撃ち リールで身を引き寄せる移動の銃)
子供の頃の記憶が形を変えて
それは僕のお守りになっていた

送迎車に揺られながら
Aは薄ら笑いを浮かべる
「お前の手柄をもらって悪いな」
僕は無言で窓の外を見つめた

後ろから黒塗りの車が尾行して来た
嫌な予感がする
僕とAは警戒する

黒塗り車はじわりと距離を詰め
やがて速度を上げて鋭く切り込んできた

激しい衝撃が送迎車を叩き
車は制御を失って回転し始める

窓ガラスが砕け
金属の悲鳴が辺りにこだまする
車はガードレールに激しく叩きつけられて停止した

衝撃で運転手は動かなくなった
黒塗りの車から武装したエージェントが降り立つ

プロの動きで僕らは素早く押さえつけられ
銃口から催涙の噴霧が吹きかけられる

視界が溶け
意識は闇に沈んでいった

目を覚ますと
雨に煙る滝の崖の上
手を縛られ 銃も奪われていた
エージェントは笑いながら告げる
「そいつを突き落とせば助けてやる」

震えるAの姿に
一瞬「消えても困らない」と
よぎる黒い衝動
だが僕は走り出し
その背を抱きかかえ
共に滝へと飛び込んだ

靴下から引き抜いたグラップリングガンを
咄嗟に放つ
岩肌に突き刺さり
ワイヤーに宙づりになって
激流を背に二人で降りていく

「……ありがとう」
震える声を聞きながら
僕は低く呟いた
「蹴落とす者は いつか自分も蹴落とされる」

雨音にかき消されながら
上ではエージェントの混乱する声が響く
僕らは森の影に紛れ
静かに逃げ延びた

――その後、僕は全てを手放した
もう振り返っても
蹴落とす者はどこにもいない
広がる空の下
自由という宇宙を
ただ飛んでいるのだから
風が背中を押し、未だ見ぬ季節へと向かう
静かな朝を胸に抱えて

6598

ガラスと振動と、秘密の画材

09/21 19:28 更新

なんか足りないと呟きながら歩く
足取りは真面目で
繰り返す日々に すり減る感情が滲む

それでも夜風に押されるように
溢れかえる音へ導かれ
旅の衝動に駆られる

形のない大事なものは
意外と近くで揺らいで
星がひときわ瞬く夜
紡いだ詩がガラス窓を震わせ
グラスの氷を静かに溶かす

知らない世界に飛び込んだ先で
待ちわびた瞳に映る僕は
光に溶け
終わりのない始まりを繰り返す

秘密の画材に描いた想い出は
素肌をかすめ
大人になれない子供の影を浮かべる

笑う君の温かさが
クリーム色の夢となり
夜空を静かに漂う

その軌跡が
気づけば僕の明日を染める

6598

蝙蝠と音と、余韻の波動

09/20 02:54 更新

子供の頃
夕暮れの帰り道、川の上をゆらゆら飛ぶ蝙蝠を見かけた
目ではなく、超音波の反射で世界を描く姿は
まるで「音の世界に閉じ込められている」ようで
音に敏感だった僕の心に、不思議な感覚を残した

やがて僕は、音の世界を旅するのが好きになっていった
音は心に余韻を残し、体に響く
音に身を任せていると
本当の自分に戻れる気がしたからだ

――大人になり
僕は巨大な音響ホールの建築に関わっていた
だが支配人は理不尽な要求ばかりを突きつける
その日も「地下から変な音がする」と言われ
僕はマンホールを開けて下水に降りた
暗闇と異臭の中を歩き、特に異常は見当たらない
ただ一瞬、小さな音がして
水面に波紋が広がったのを見た
わずかな違和感を抱えたまま、地上へ戻る
「これが僕のやりたかったことか」
音響ホールで小さく呟く声は、反響して
音の牢獄に閉じ込められた悪夢のように響いた

実は僕にはもう一つの顔があった
数年前から世界に現れた
「Nightmare Wraith(ナイトメア・レイス)」――通称NW(ヌウ)
人の生気を吸い繁殖する亡霊のような怪物だ
NWはそれぞれ異なる能力を持ち
対峙するハンターもまた、自らの特性を武器に戦う
僕の特性は“音”
音と同化し、音速の力を操ることができる

その日、出動要請が入った
場所はあの音響ホールだった
駆けつけると仲間のハンターが既に集まっていた
天井には支配人が血まみれで吊るされている
緊張が走った瞬間、空気がかすかに震えた
直感で身をかわす
次の瞬間、仲間の身体が音速の衝撃で真っ二つに裂けた
――NWは超音波を操る能力の持ち主だ
そう悟った時には、もう仲間が次々と倒れていった

居場所を探る唯一の手がかりは
攻撃の直前に走る、わずかな空気の震え
その時――また空気が震えた
僕は能力を発動し、全身を震わせる音を解き放つ
波紋のように広がった音は壁や天井を叩き返し
異常な数の反響が一点に収束する
NWはその反響に耐えきれず、たまらず飛び出した
それは巨大な蝙蝠の怪物――
闇に棲む悪夢そのものだった

闇を切り裂くように
僕は音と同化し、全身を音速の矢へと変える
空気を裂き、衝撃がホール全体を震わせる
閃光のような一撃がNWの巨体を貫き
轟音と共にその身体は弾け飛んだ

「音は反発するものじゃない。同化するものだ」
荒い息を吐きながら、僕は呟いた

――あの日から僕は悪夢の世界を抜け出した
音は波を作り、言葉は世界を作る
心から溢れ出す波動は余韻を残し
やがて共鳴となって誰かに届く
音に閉じ込められていた蝙蝠のように
閉ざされた心の奥にも
いつか光は響いていくのだと信じて

6598

無邪気と崖と、終わらない水曜日

09/19 03:34 更新

無邪気に遊んでいた子供の頃
毎日は変化で満ちあふれ
冒険は当たり前のように
目の前に転がっていた

いつからだろう
冒険に出なくなったのは

大人になり
会社という閉じた檻に入り込む
プロジェクトリーダーとして
身を削り、終電に揺られ
昇進の幻を追い続けた
気づけば時間はループし
夜が明けても “昨日と同じ今日” が繰り返されていた

自分を変えたくて
いや、たぶん閉じた日常から脱出したくて
意味はわからなかったけど
毎日ランニングをするようになっていた
会社から帰って来て
どんなに夜が遅くなっても
必ず走っていた

この時間でも数人は走る人が居た
最近は僕より早く走る人は居なくなった
毎日の成果で少しずつ速くなり
得意げに夜道を駆け抜ける

その時、後ろから
ものすごいスピードで近づく足音
振り返る間もなく追い抜かれ
あっという間に遠ざかっていく影
負けじと追いつこうとしたけれど
なかなか届かず
途中で諦めて呟いた
「ちょっと早いからって自慢すんなよ」

それから何度も見かけるようになった
相変わらず僕を追い抜いていき
気づけばいつも姿を消している
顔はなぜか見えないまま
ただ履いている靴が
子供のような「無邪気」なデザインで印象に残った
そして毎週水曜日になると現れる
僕は彼を「無邪気」と名付けた

会社に出社すると
パワハラ上司に呼ばれた
僕は言われることをなんとなくわかっていた
「君をプロジェクトリーダーから外して
代わりに転勤して貰う」
転職しても変わらない
このループするような日常
気づけば街も、人も、世界も
だんだんと希薄になっていき
残されたのは会社とわずかな人影だけだった

水曜日の夜
僕はこれまでと違う意識で走り出した
あの「無邪気」に最後までついていくために

しばらく走ると
やはり後ろから近づく気配
一気に追い抜かれ
その背中を必死に追いかける
何度も足が止まりそうになり
汗で視界が滲み、意識が朦朧とする
それでも見失わないように歯を食いしばった
やがて「無邪気」はランニング場を出て
人気のない道路へと駆け抜けていく
僕もただ夢中で
その背中を追い続けた

長い時間を走り続け
ついに体力が尽きて倒れ込む
見上げると「無邪気」が立っていた
その先は――崖

「どっちを選ぶ?」
無邪気が声を投げかける

僕は迷わなかった
「先の崖に決まってるだろ」

身体は宙に放り出され
夜空と大地が反転する
心臓が爆ぜる音
世界が割れる音
そしてすべてが暗転した

気がつくと
僕は深夜のランニング場に倒れていた
汗と土と夜風に包まれながら

永遠に続く安定の檻から
僕は飛んだのだ
変化のある未来へ
苦しくても、現実へ

夢邪鬼な純粋さに導かれ
閉ざされたループは解けていく
崖の先に広がっていたのは
止まっていた時計が再び動き出す
目の眩むような
新しい朝だった

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