【第一章】
静かなスタート。だけど、心の中は燃えていた──
「名古屋って、やっぱ厳しいよな…」
ゴォォ……（電車の音）
2021年6月。
レギュラーランクの札を手に、
静かにドアを開けた青年がいた。
楓理。
その名を知る者は、まだ誰もいなかった。
──
ランキング表。
名前が載っていない“空欄”のところを、ただじっと見つめる。
（……俺は、ここに、名前を刻みたい。）
静かに、でも心の奥ではボウッと火が灯る音がしていた。
【第二章】
ひとつ、またひとつ──積み重ねる小さな階段。
7月、8月、9月──
「うっ……また圏外か」
「でも、なにかが少しずつ変わってきてる」
ドクン、ドクン……（高鳴る鼓動）
ようやく名前が出たのは、入店から3ヶ月後。
15位。
パラッ……とページをめくるように、彼のステージが一段上がった音がした。
「よし、次は二桁以内」
13位、10位……
「よし……やれる、はずだ」
地味で地道な道のり。
でも、静かな勝負に、確かな熱があった。
【第三章】
はじめての“光”。それは、挑戦者にしか見えない景色。
──2022年4月──
ついに、その瞬間が訪れる。
パッ！とスマホ画面に表示されたのは、名古屋ランキング「第2位」の文字。
しかも、称号は……ダイヤモンド。
「……っ！」
言葉が喉で止まる。
身体がピタリと固まり、
その場で小さく拳を握った。
（やっと……ここまで来たんだ）
胸の奥がジワッと熱くなる。
光は眩しかった。でも、それ以上に、重かった。
──ここからが、本当の勝負だ。
【第四章】
3年という名の“修羅場”──その先に、見たことのない景色があった。
ここからの3年間。
雨の日も、風の日も、挑み続けた。
ランキング発表の日。
タップ……
画面に表示される「1位」「2位」「3位」の文字。
バクン……！（心臓の音）
“また入ってた。次も、もっと上を目指す。”
2022年から2025年までの3年間。
連続で、ほぼ毎月トップ3入り。
1位獲得：20回以上。
ダイヤモンド獲得：15回。
そして──2024年4月。
ランキングに、初めて“マスターズ”という称号が新設された。
その初代獲得者が……楓理だった。
（マスターズ……？ 本当に俺でいいのか……）
でも次の月も、また次の月も、
彼の名前は1位に刻まれ続けた。
【第五章】
もしも確率で測るなら──それは「奇跡」と呼ばれる領域。
「仮に、1ヶ月トップ3に入る確率を3％とするなら……」
(0.03)^36 ≒ 1 × 10⁻⁵⁵。
──つまり、
1の前に0が55個続く確率。
それが、“丸3年間ほぼ毎月トップ3入り”を現実にする難しさ。
でも、彼はそれを「狙って」やった。
運じゃない。
地道に、コツコツと。
時には倒れそうになりながら。
“継続”は、奇跡すら超える。
【第六章】
勝ち続けることは、孤独で、時に痛い。だけど──
深夜、誰もいない帰り道。
ギシッ……と足が重くなる日もあった。
「また勝たなきゃ、また結果を出さなきゃ」
そのプレッシャーに、喉が締めつけられる夜もあった。
でも、顔には出さなかった。
背負っているものがあったから。
笑顔を見せてくれるお客様たち。
声をかけてくれる仲間たち。
時に張り合い、励まし合うライバルたち。
「自分ひとりで走ってきたんじゃない。」
それだけは、ずっと胸の中にある。
【最終章】
順位がすべてじゃない。でも、挑戦した証にはなる。
「順位がすべてだとは思っていない」
そう語る楓理の目には、疲れもあれば、深い自信もある。
数字の裏側には、
努力、涙、緊張、そして人との繋がりがある。
それを知っているから、
彼はこれからも、“目に見える結果”に逃げない。
だけど――挑戦は、止めない。
次に、こんな男がまた現れるだろうか？
48ヶ月間、戦い続けたその背中は、
言葉よりも、数字よりも、何よりも雄弁に、
“本気”を語っていた。
その日も静かにドアを開けて、
彼は言った。
「じゃ、行ってきます。」
──今日も、名古屋で楓理は戦っている。
名古屋萬天堂 楓理💋
