指先でなぞる。
行ったことのある街も、まだ知らない景色も。
海沿いの静かな道。
雨上がりの石畳。
名前も知らない小さな駅。
夕暮れに染まる川辺。
不思議なことに、記憶に残っているのは景色だけじゃない。その時に流れていた空気、交わした何気ない言葉、少しだけ触れた温もり。
人は場所を記憶しているようで、本当はその時間を記憶しているのかもしれない。もし今、僕の指が地図の上をゆっくりと辿るなら。
次に止まる場所はどこだろう。
小さな安らぎのある街でもいい。
静かな温泉街でもいい。
誰も知らない隠れた裏路地でもいい。
歩く速度。
時々立ち止まり。
時間を心地よく感じながら。
そんな時間を重ねていくと、目的地はいつの間にか特別じゃなくなる。
安心して肩の力を抜ける時間。
ふと笑みがこぼれる瞬間。
誰にも見せていない自分を、そっと預けられる感覚。
指で辿る僕が行った場所。
心が少し軽くなった場所。
自然と笑顔になれた場所。
また帰りたいと思えた場所。
そんな記憶を、一つずつ増やしていきたい。
そしていつか、その地図のどこかに――
「あの日の時間が忘れられない」
そう思える、小さな印が増えていたら嬉しい。





























































































































































































































